素粒子原子核研究施設におけるJ-PARC 実験 E36

Precise Measurement of Γ (K+→ e+ν)/Γ(K+→ μ+ν)
using Stopped Positive Kaons

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J-PARC E36 実験とは?

研究の背景

標準模型(SM)は多くの素粒子物理現象を巧みに説明するが、その一方でSMの限界も指摘されている。例えば、階層性の問題、宇宙の暗黒物質や暗黒エネルギーの存在、宇宙のバリオン非対称性、等はSMでは説明出来ない問題であり、SMを超えた新しい物理(NP)の存在を示唆している。これらの問題を解決する理論面からのアプローチとして、SMに超対称性(SUSY)を導入したモデル(MSSM)など様々な新しい理論が活発に提案されてきている。また実験面では、史上最高のエネルギーを生み出す装置CERNのLHCで実験が行われた。既にHiggs粒子が発見され、粒子の理論予測をした研究者に2013年のノーベル物理学賞が贈られた。このように、素粒子物理学は今まさに大きい転換期に突入していると言える。

Precise measurement of RK =Γ (K+→ e+ν)/Γ(K+→ μ+ν)

本研究は、TREK検出器システムを用いてK+→ e+νとK+→ μ+ν崩壊強度の比RK =Γ (K+→ e+ν)/Γ(K+→ μ+ν)を正確に測定することで、レプトンフレーバー普遍性の破れを探索することを目的としている。素粒子の世界を記述する標準模型(SM)により極めて正確にRK値を計算することが可能であり、実験で求めたRKとの差異を見出した場合、SMを超えた新しい物理現象の存在を直接意味することになる。近年注目されている超対称性粒子をSMに組み入れた理論(MSSM)において、RKの値を大きく変化させる仕組みが議論されている。MSSMではレプトンのフレーバーが保存されない現象を予言するが、その機構がRKにも影響をもたらすという可能性である。特に電子がタウ粒子に変化することで、RKが1-2%程度SM予想値よりずれることが示唆されている。本研究は、実験的にRKを Δ RK/RK = 2.5×10-3より高精度で測定することを目標としている。従来の実験よりも精度が倍近く向上することになる。

Search for heavy sterile neutrinos

更に本研究では、重いニュートリノ(N)をK+→ μ+N崩壊によって発生したμ+粒子の運動量と偏極度を測定することで探索出来る。 3種類の重いニュートリノをSMに組み込んだ理論模型によると、 10−6程度の分岐比で重いニュートリノが発生する可能性が指摘されている。上述のTREK検出器は、重いニュートリノを検出できる十分な感度を持っている。 この実験で極めて重要なこととして
(1) ミュオンの運動量分布に重いニュートリノに起因する単色ピークが発生する。
(2) ミュオンの偏極度がニュートリノ発生のメカニズムやニュートリノ質量に依存する。
を挙げることが出来る。 E36実験では、ミュオンの運動量を測定することで、分岐比が10−8まで感度を向上させる。 これは従来の実験よりも100倍精度が向上することになる。この実験で重いニュートリノの存在を示唆する結果が得られた場合、偏極度を同時に測定する実験を実施する。